こんにちは、ロサンゼルス留学中のtakaです。
医師として病院で働いていて、大学病院や大学院などで研究していると、「海外研究留学に行ってみたい」と一度は思うこともありますよね。でも、留学は簡単ではないし、費用もかかるし、どうしようか、悩む方も多いのではないでしょうか。
今回は、私がアメリカ医学研究留学をしている経験を元に、病院で働いている医師が海外研究留学をすることの是非について、そのメリットとデメリットから検証していきたいと思います。
私は、一介の外科医師であり、医師となって11年目にアメリカのロサンゼルスへ研究留学をしに来ています。現在、癌に関する医学の研究をしています。
この記事は、医師として働きながら将来海外に医学研究留学をするか考えている若手医師の方に向けて書きました。参考になれば幸いです!
3つのポイントから解説していきます。
・医師の研究留学の新しいスタイル
・海外研究留学をするメリットは?
・海外研究留学をするデメリットは?
医師の海外研究留学の新しいスタイル
私の周りを見渡してみると、最近は今までと違った形で留学する人がいるな、と感じます。
まずは、今までの留学のイメージ通りの基礎研究室についての説明から始めて、新しい留学のスタイルの実例をいくつか順番にご紹介します。
基礎研究やTR研究の研究室に留学する
昔から一番オーソドックスな留学スタイルです。基礎研究や、基礎と臨床の架け橋であるトランスレーショナルリサーチ(TR研究)の教室に留学し、試験管を振って細胞実験や動物実験を行う研究をします。
私の感覚ですが、もちろん分野にもよりますが、近年はテクノロジーが進みこれらの研究は専門性が高くなっており、高いインパクトの雑誌に論文を出すことが難しくなっている印象があります。競争も激しくなっているのでしょう。そのような状況の中で、基礎研究の研究室は特に、今までの基礎研究歴が重要視され、受け入れてもらうのは簡単ではありません。
臨床研究機関に留学する
ヨーロッパの話ですが、私の同期がヨーロッパで最も有名な癌の臨床研究組織に留学し、多国籍にわたる臨床研究がどのように行われているのか、そのマネージメントを勉強しに行きました。
公衆衛生学の教室に留学する
最近は公衆衛生学の研究所に留学し、データベースから様々な解析方法を使って臨床の疑問を解決するような研究を行なっている先生も見かけます。
大学院生として留学する
私が臨床でお世話になった先生の一人は、医療経済の分野で将来研究をしたい、という希望を持って大学院留学をしました。学費が年間300万程度かかったとのことですが、学位を取得し帰国しました。現在も、臨床を続けながら医療経済の研究で活躍されています。
別の先生は、ハーバード大学と提携している公衆衛生学の研究機関に留学し、ハーバード大学の公衆衛生修士(MPH)を取得して帰国しました。これは3年間夏の3週間のコースに参加することで取得できるとのことです。
海外研究留学のメリット:留学で何を得てくるか
留学すれば凄い、という時代が以前はあったかもしれませんが、現在ではその考えはもう古いでしょう。
留学に行って日本に帰ってきた時に、「自分の分野で何を提供できるようになるか」が大切です。
その上で、海外留学に行くとどんなことができるのか、メリットを挙げてみたいと思います。
やりたい研究や将来につながる研究をする
日本の大学院などで、行った研究を更に深めたいと思い、自分で見つけた研究室に留学できる猛者が
そこまでなくとも、縁があって留学した先で、研究した内容や習得した手法を日本に持ち帰って、日本での研究に生かすこともできるでしょう。
自分次第ではありますが、帰国後の将来に繋がる研究ができる可能性があります。
英語でのコミュニケーションを鍛える
英語は日本でも十分習得可能です。
日本人はスピーキングとライティングが比較的なことが多いですよね。これらも、今は格安なオンライン英会話をうまく使うことで十分伸ばすことができます。
とはいえ、忙しい病院勤務の合間に勉強することはなかなか難しいですね。
留学することで、強制的に英語でコミュニケーションを取る環境に入ります。しかも、日常会話だけでなく、学術的な議論やプレゼンテーションもしますので、日本にいるだけよりも鍛える機会に恵まれていると思います。
家族や一人の時間を持つ
これは行き先の研究室にもよりますが、日本の病院勤務と比べると、比較的時間に余裕のあるところが多いようです。
私も日中の時間は研究を自分で組み立てて自由に時間を使えることが多いですし、自宅で過ごす時間も圧倒的に日本より余裕があります。
家族で留学するなら、家族との時間をたくさん取れますし、一人で留学するのなら自分がやりたいことをやる時間もあります。
私は、ランニングやHIITなどのトレーニングをしたり、資産運用の勉強をしたり、有効に時間を使っています。
それ以外のメリット
将来若い先生の留学サポートができる
それ以外で大きい一つのメリットは、将来上に立つ人となった時に、若い先生の留学をサポートしてあげることができることだと思います。自分に留学経験があれば、アドバイスを求められた時に、何かしら有用な考えを伝えてあげられるでしょう。逆に留学経験がないと、これはなかなか難しいと思います。
箔が付く
昔の考えではありますが、今でも多少「箔が付く」ということはあるかと思います。将来ある程度のポジションにつく場合、履歴書的にも多少のメリットになると思います。
コネクション
帰国後も有意義な議論ができる仲間や知り合いができることと思います。
また、ちょっと現金な話ですが、高いインパクトの雑誌の編集長と知り合いになることで、もちろん論文の質は高い必要がありますが、論文がアクセプトされやすくなるとの話を聞いたことがあります。まあ、論文の質が良いことが一番大事ですので、おまけ的なメリットと考えておくのがいいですね。
人脈は結果的にできるものであって、人脈を無理に広げに行くのは良し悪しかと思います。
海外研究留学のデメリット:乗り越えるべき障害
お金がかかる
通常留学先では無給か薄給です。留学中は年間350万程度はかかりますし、初期費用を含めて2年間研究留学するためには1000万円は最低必要になります。
事前に資金の準備が必要ですし、留学中も贅沢はできません。
企業から派遣された海外赴任の家族と比べてしまうと、彼らは奥様が毎週新しいスタバのボトルを買っていたり、しょっちゅうレストランで食事を楽しんでいたり、だいぶ生活が違うなと感じてしまうかもしれません。
また、日本にいて病院に勤務して診療することで、年間1000万円前後の給与収入があるかと思います。留学することで、日本で病院勤務していれば入るはずだった給与も得られませんので、年間合計1350万円程度の経済的損失があります。
留学先の当たり外れがある
自分の興味のある研究ができなかったり、上司や同僚と相性が悪かったり、ブラックな研究所だったり、様々な外れがあります。
他の人が留学したところでも、その人にとっては良くてもあなたに合うかどうかは分かりません。
可能であれば事前に見学に行ければベストですが、そうでなかったとしてもビデオ会議などで可能な限り事前に情報を集めておくべきでしょう。
日本でのキャリアが中断する
前にも書いたように、「留学したから凄い」という時代は終わっていますので、帰国後のポジションを得るのに苦労している話もよく聞きます。
何もコネクションがないところに就職するには、相当な業績を挙げてくるなどしないと厳しいでしょう。
あなたが留学している間にも、日本で診療の経験や日本でできる研究の業績を積んでいる人がたくさんいますので、よほど魅力がなければいいポジションは得られないでしょう。
医局から派遣されていく場合は、この限りではありません。医局から留学に行くためには、その医局内でのエリートでなくてはいけませんが、帰ってきたら医局の中でのアカデミックポジションが約束されていることがほとんどです。医局も留学経験を還元してくれることを期待して派遣していますので、その場合はキャリア中断は問題にならないでしょう。
家族の問題
結婚していたり、子供がいると、考えるべきことがたくさんあります。
配偶者のキャリアが中断してしまうことで、帰国後の復帰の際に配偶者に大きな負担を強いてしまうことも考えられます。
配偶者のキャラクターによっては、海外ですることがなく最初は友人もいない状況で、鬱状態になってしまい留学継続ができなくなったケースも話を聞きました。
また子供の教育も、未就学ならナースリーに預ける場合に場所によって高い費用がかかりますし、就学時の場合は帰国後に日本語や日本の学校の勉強についていけるようにサポートが必要です。
終わりに
海外研究留学はメリットだけでなくデメリットも多いため、自分のやりたいことと様々な状況を良く考えて、留学するかどうかを決めることが大切です。
もちろん行ってみないことには分からないこともあるので、リスクを踏まえた上で、それを乗り越えてでも留学したいという方は是非挑戦していただければと思います。そのような方の成功を心から応援しています。
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