【留学費用】医師のアメリカ研究留学2年で1000万円!?家計を公開して徹底解説

医学研究留学

医師で研究留学に行くとなるとどれぐらいの費用がかかるのでしょうか。研究留学に行きたくても、費用の面で躊躇してしまう方もいるかもしれません。

今回は、私がアメリカ医学研究留学をしている経験を元に、研究留学で必要な費用を具体的に公開し、少ない費用の中でどのように留学生活を楽しみ充実したものにするかについてお話ししたいと思います。

私は一介の外科医師であり、医師となって11年目からアメリカのロサンゼルスに癌の研究留学をしています。

この記事は、これから臨床家でありながら医学研究留学を目指している若手医師の方の参考になればと思い、書いています!

3つのポイントから解説していきます。
・アメリカの研究留学にはいくら費用がかかるの?
・研究所から給与は出るの?
・アメリカ研究留学中に節約する方法は?

ズバリ!私が研究留学のために用意した費用は?

単刀直入に言いますが、私が2年間の研究留学のためにあらかじめ用意した金額は、約1000万円です。

ベンツのSクラスが買えるか買えないかくらいの値段です。

私は幸いなことに留学先の研究所からある程度給料が出ることが約束されていました。

私の場合は、コロナの状況で家族が日本に残っていることもあって、日本で妻の家賃なども計算して準備した額であり、やや特殊な状況かと思います。この記事では、実際に留学してかかっている費用から、単身でアメリカに研究留学した場合、実際に必要な費用はどれくらいになるのか、詳しく公開したいと思います。

なお、ここで公開する費用については、2021年1月のおよその費用であり、物価などの環境や個人の状況によって変化することがありますのでご注意ください。

留学前に必要な準備費用

私は以前から、海外研究留学に行きたい、と希望していました。留学先をいくつも調べ、スカイプなどで面談を受けたこともありますが、なかなか受け入れてくれる研究室が見つからない時期もありました。

今回、2020年10月にたまたま上の先生から声を掛けていただいて機会をいただき、急遽2021年1月からここロサンゼルス留学に来ることが叶いました。

2年ほど前まで大学院に入っていたこともあり、大学院の学費の支払いもあったため留学のための貯金はそこまで十分ではありませんでしたが、研究所から給与も多少出るとのことで、留学を決意しました。

以上の経緯の私が、アメリカに旅発つ前に準備としてかかった費用はこちらになります。

留学の準備費用
・中古車の購入:110万円
・住居の受け渡し金:36万円
・JAL海外赴任者総合保障制度:30万円
・自動車保険料(半年分):8万円
・米国の携帯電話とインターネット(初月分):1万円以下
・渡米後のホテル代(1週間分):10万円

合計:約195万円
(* 2021年1月当時の1ドル105円換算で計算しています)

留学中にかかる実際の毎月の費用

1月中旬に渡米しましたが、勤務が始まったのは2週間後でしたので、給与は2月分から出ることになりました。

最初の2週間は、新しい生活を準備するために家具などを購入し、出費が続きました。

2月からは、生活のリズムができ、だいたい出費も予想ができるようになってきました。

最初の5ヶ月でかかった費用はこちらの通りです。

最初の5ヶ月でかかった費用

(1)最初の初期費用
・家具類:10万円
・自転車:1万円
・自動車免許:0.5万円弱
・雑費:2万円
・食費2週間:2万円
小計:約15万円

(2)2月以降の5ヶ月間の出費
・家賃+住宅保険:21万円/月×5ヶ月 = 105万円
・携帯電話とインターネット:1万円/月×5ヶ月 = 5万円
・ガソリン代:2200円×5ヶ月 = 約1万円
・自動車保険料(次の半年分):8万円
・食費:4万円/月×5ヶ月 =20万円
・外食費:1万円/月×5ヶ月 = 5万円
・雑費:1万円/月×5ヶ月 = 5万円
小計:約149万円

合計:約164万円
(* 2021年6月現在の1ドル110円換算で計算しています)

毎月約30万円程度まで、節約していますね。1年間に換算すると、年間の出費は360万円です。

東京での生活と比べると、食費などはだいぶ節制しています。最初は珍しさで色々と外食に使ったり、新しい生活のためにテンションが上がって余計な買い物をしたりして、多少無駄に使ってしまいました。その後、思い直して無駄をなるべく省くようにしました。

コロナの影響下で、初めの頃は店内で飲食できずにテイクアウトのみ可能であったり、ハリウッドなどの娯楽施設は基本的に閉まっていたので(ゴルフ場は市民の反対に遭い、通常営業していました)、そこまでは使い込んでいなかったと思います。

研究室の給与事情は!?

私の研究室の給与はこれくらい

今回の記事では、実際の費用を漏れなく公開していきます。

私の研究室の給与は手取りで毎月約29万円、年間約350万円になります。

私の住んでいる地域はビバリーヒルズからちょっと外れたところで、家賃はアメリカで3番目に高い地域と言われています。

ロサンゼルスの物価は高く、ランチを外で食べようと思ったら1000円以上はしますし、夜に外食してビールを飲んだら一人3000円から5000円はしてしまいます。日本が恋しくなってラーメンを食べに行くと、1500円以上することがほとんどです。

自炊しながら単身で慎ましく生活する分にはギリギリ可能ですが、物価の高さを考えるとこれだけではキツイな、と感じます。

ちょっと旅行に行きたいと思ったり、家族連れで留学する場合は、日本で用意した貯金が絶対的に必要です。

他の研究室はどうなんでしょうか?

給料が出る研究室は先人の功績のお蔭

医局からのコネクションが続いている研究室は、給与が出るところもまだあると聞いています。これはひとえに「今までの先輩方の働きが良かったから、同じ施設から来る人にも給与を出そう」、という先人の功績のお蔭です。

ただ、医局のコネクションがあったとしても、現在は給与が出ず、奨学金を準備する必要がある研究室が増えているようです。

私も、今回の留学が決まる2年ほど前に、留学先を探して様々な研究室にコンタクトを取っていた時期がありましたが、どこもグラント(研究助成金)は必須でした。1ヶ所は医局から一人留学している最中のところでしたが、年間100万円なら出せると言ってくれました。その他、3ヶ所程度スカイプ面接までした研究所がありましたが、いずれも「来るなら無給なのでグラント取って来るように」と言われました。

NIHでポスドクの最低給与基準が定められている

National Institute of Health (NIH) のホームページ参照

アメリカは、NIHでポスドクの最低給与基準が決められており、ポスドクの年数によりますが約5万ドル以上となっています。2019年に3千ドル引き上げられてこの額になっています。多くの研究施設にとって、この「NIH基準以上で雇用していること」を証明することが大切のようですので、給与を出してもらえるなら年間5万ドルが保証されているということです。
(NIH:アメリカ国立衛生研究所。アメリカの医学研究の拠点機関)

ただ、逆に無給の場合は年間5万ドル分のグラントあるいは日本の職場などからの給与が必要になります。「NIH基準以上で雇用している」条件に当てはまるには、その額がグラントかどこかの施設から給与として出ている必要があるため、貯金として持っているだけでは金額として認められません。

留学先を決める際は、グラントをしっかり取るか、給与が出る研究室を選ぶ必要があります。

生活費として留学資金を準備する方法

以上のように、アメリカ留学の費用はとても費用がかかることを理解していただけたと思います。

実際に周囲でも、費用の面を考えて留学の選択肢を諦めている人も見かけました。留学に行きたいと思っていても、費用の面で断念せざるを得ないのでしょうか?

もし留学に行きたいのなら必ず方法はあると思います。

みなさんの費用の工面に少しでも役立つよう、「留学の費用を準備する方法」と「充実した留学生活を送るための節約方法」についてご紹介します。

留学前にバイトや副収入で稼ぐ

私は留学直前に勤めていた病院では、病院の規定でバイトが禁止でしたが、その前の病院ではバイトが自由でした。画像の読影バイトや、空いている時間でできるバイトを探して、留学資金を貯めていました

また、留学を具体的に考え始めた頃から、インデックス投資を始めて毎月積み立てていました。そのお蔭で、ただ貯金していた場合と比べて数十万の含み益がありましたので、留学に際して現金化して準備資金としました。留学を考え始めたら、早い段階から貯金して投資に回しておくと、資金準備は楽になると思います。

グラントはハードルが高いが応募する価値がある

今回の留学が決まる2年ほど前に、留学先を探してコンタクトを取っていた際に、奨学金に複数応募して見ました。

結論からすると、臨床の片手間で研究をしている身では、なかなか厳しいと感じました。大学院で研究した内容の延長線上で留学先を決めるのであれば、可能性はあるかと思います。ただ、臨床をやりながら、研究をして、グラントもとって留学した先輩も数名いるので、挑戦はすべきと思います。

学術振興会の海外特別研究員や、上原記念財団、内藤記念財団、武田科学振興財団、安田記念医学財団などが代表的なグラントです。学術振興会は1年間に500万円ですので、無給の研究所でも十分やっていけます。

私は、公衆衛生の特殊な解析方法を使って、癌の薬物治療に関する研究を行なっていました。臨床研究に興味があり、臨床研究グループに参加して、研究提案などを行なっていた中で、バイオマーカーの研究を掘り下げたいと思い留学先を探していましたが、グラントはなかなか取れませんでした。グラントの申請書を書く能力が高くなかったのもありますが、基礎研究実績がなかったのも影響があるかと考えています。

留学ローンを利用する

東京厚生信用組合の医療従事者限定の留学ローンは、金利年間1%と良心的です。私の同僚はこのローンを利用して留学資金を準備していました。その他、医師会も安い金利のローンを準備しているとのことです。

結局は利子付きで返済する必要があるので留学ローンは最終手段とするべきですね。

アメリカ留学を楽しみながら節約する!

固定費を減らす

住居、保険、食費が一番大きな固定費です。

住居に関しては、安全な地域に住むことが大事ですが、自分で検索して情報を集めることで、より安く借りられる場所が見つかります。私の地域では日系の不動産屋があり、留学生はよく相談に行くのですが、自分で検索して情報を持っていないと、高い物件に案内されがちです。

保険に関しては、ここでは自動車保険についての情報をご紹介します。ロサンゼルスは車は必須ですが、アメリカでの運転歴がない場合は自動車保険は年間40万以上することがほとんどです。私は、JAL海外赴任総合保証制度に申し込み、ここを通じてアメリカの自動車保険と契約を結びました。日本の信用があるため、自動車保険料は年間16万円程度にまで抑えられました。

食費についてですが、アメリカでの外食は非常に費用がかさみます。テイクアウトにするか、自炊することで費用を抑えることをお勧めします

現地の保険制度をうまく使う

研究所に就職すると、現地の医療保険制度に入ります。その時に、同時に申請するとよい制度がカリフォルニア州にはあります。

Medi-Calという制度で、年収の少ない成人に対して、医療費が無料または安くなるという制度です。年収と家族構成によりますが、私の研究所だと家族3人でこの年収であれば、医療費が無料になります。

大きな病気をしなくても、留学中も歯科検診や眼科でメガネを作ることが必要な場合もあると思います。そのような際に、この制度に加入しておくとだいぶ助かります。

自分でできることはなるべく自分でしよう

なるべく自分でする習慣をつけることが、節約につながります。

アメリカは人件費が日本と比べて高い国です。ロサンゼルスの最低賃金は、時給1570円程度(14.25ドル)となっており、日本の最低賃金の平均より1.7倍も高い数字になっています。外食費が高いのも人件費の影響が大きいと思います。

家具のイケア(IKEA)が成功したのも、実は家具の販売で大きな割合を占めていた自宅までの輸送と家具の組み立て作業をお客さん自身にしてもらうことで、人件費を浮かせたのが大きな要因と言われています

また日本はサービスが良い国なので、困ったことがあってもお店でやってもらえることが多く、ついお店に頼ってしまうことが多いでしょう。

アメリカでは、自分で出来ることはなるべく自分でやるのがコスト削減につながります。食事もなるべく自炊する、イケアの家具も自分で持てるものはなるべく自分で運ぶ(郵送は別料金)、自転車がパンクしたら自分でAmazonなどで材料を買って修理する、車の空気圧も自分で調整するなど、自分でできることはたくさんあります。

日本に帰る頃には逞しくなっていることでしょう。

終わりに

今回は、臨床家の若手医師が海外に研究留学する場合にどのくらいの費用がかかるかを、現在ロサンゼルスに留学中の私から経験を踏まえてお話ししました。

留学は費用はかかりますが、日本にいてはできない経験ができ、自分の将来のキャリアを考える上でも、メリットはたくさんあると思います。

この記事では費用の準備の仕方も具体的にご紹介しましたので、ぜひ参考にしてください。

充実した研究留学生活を送るために役立てば嬉しいです。

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